戦前ブルースを聴くにあたって、誰もがロバート・ジョンソンの数々の「伝説」に触れるでしょう。
いわく
「クロスロードで悪魔と取引をして抜群のギター・テクニックを手に入れた」
と。
まぁ「伝説」です。本当かどうかは誰にも分かりません。
ですが、彼がサン・ハウスを夢中で追っかけてヘタクソなギターを弾いて顰蹙を買い
「失せやがれこのヘタクソなガキめ!」
と言われてからたった数年で驚くべきギターテクニックを身に付け、サン・ハウスをして
「何てこった、アイツは誰よりも速くいっちまいやがった」
と驚嘆されたことは紛れもない事実として、記録に残っております。
そう、確かにロバート・ジョンソンは「たった数年」でギターが別人のように上手くなったんです。
しかもそのスタイルは、ミシシッピ・デルタ特有の、激しく弦を叩いて煽るようなそれだけではなく、どちらかといえば当時流行していたシティ・ブルースのピアノ奏者達の奏法をギターに置き換えたような、どっちかといえば「ミシシッピらしからぬお洒落で洗練されたスタイル」でした。
ジョニー・シャインズら、ロバート・ジョンソンと一緒に旅をしたことのある関係者の証言では「一度聴いた曲は何でもすぐギターで再現することが出来たんだ。しかも、レコードが鳴っている間中、こっちとお喋りしてたにも関わらずだ」と、その驚異的な聴覚がしばし語られています。
ロバートは一体どこでそんな技術を身に付けたのでしょう?
謎が謎を呼びますね・・・。