ロバート・ジョンソンは、故郷ミシシッピ州ヘイズルハーストを飛び出して数年間、アイク・ジナマン(アイク・ジナナン)という人物にギターを教わったとされています。
通説では、「ロバートとアイクは、夜な夜なある墓地でギターの練習をしていた」と云われていました。
流石にそんな出来すぎたシチュエーション(!)と思ってたのですが、どうやらこれは本当の話のようです。
日暮泰文著「RL─ロバート・ジョンスンを読む アメリカ南部が生んだブルース超人」(P-VINE)という本では何と、追跡調査の結果「ロバート・ジョンソンがアイク・ジナナンと一緒に練習をしていた墓地」までが特定されています(この本の中で最大のクライマックスです、ブルースファンは読むべし!)。
ところでこのアイク・ジナマンという人物、実は正体不明です。
ロバート・ジョンソンのCD「コンプリート・レコーディングス」の中に、白黒の写真が一枚あるだけで、いろいろ調べても「アラバマ州グレイディ出身のブルースマン」という情報しか出てきません。
「凄い人の師匠が凄い人だった」というのは、どの世界にもよくある話ですが、やっぱりたったの数年(2年ほど)で、「その辺のヘタクソなギター弾きだったロバート・ジョンソン」を、当時のデルタ地域のトップ・ミュージシャンをして驚愕せしめたというほどですから、その腕前は相当なものだったと思うのですが・・・。ジナマンの録音物は残っておりませんし、リサーチャー達の懸命な捜索にも関わらず、音源が残された痕跡すら発見されておりません(録音自体やってなかったんでしょう)。
ということはですよ
「アイク・ジナナンとは一体何だったのか?」
という永遠の問いが、「ロバート・ジョンソンの並外れた聴力」の謎と共に、戦前ブルースの深い闇の中で未来永劫グルグルと回りつづけることになるのです。
それプラス
「録音物が残ってないけど凄かったブルースマン」って、相当数いたんだろうな・・・。
ということに想いを馳せずにはおれなくなります。
う~ん・・・
戦前ブルースはやはり深い闇です。